【パン用酵母の種類と特徴】天然酵母とイーストの違いとは?

素材の話

 

生地をふっくら、おいしくふくらませてくれる酵母種は、パンづくりに欠かせない素材。

手軽に使えるインスタントドライイーストのほかにも、小麦粉やレーズンなどからおこす自家製の酵母種、市販の天然酵母種など、その種類はさまざまです。

そのため、「違いや使い分け方がわからない」という方も多いかもしれません。

そこで今回はイーストと天然酵母種の違いや、それぞれの特徴、使い分け方についてまとめてみました。
 

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いわゆる“天然酵母”とイーストはどう違う?

 

酵母とは、肉眼では見えないほど小さな微生物で、穀物や果物、植物の葉や花、ほ乳類の皮膚表面などに生息している真菌類の一種。

パン用には「サッカロマイセス セレビシエ」という種類の菌が使われています。

 

パン用のインスタントドライイーストや生イーストも、このサッカロマイセス セレビシエ属で、パンづくりに適した酵母を自然界から採取し、純粋培養したもの。

「工場で人工的につくられている」と思っている方もいるかもしれませんが、イーストもまたれっきとした生き物です。

 

一方、天然酵母種は穀物や果物などに付着した酵母を培養した発酵種の一種。

自家製の場合は酵母以外にも雑多な菌が含まれているため、培養する環境により発酵力や風味が違ってきます。

 

このふたつを比べてみると、純粋培養されたイーストは発酵力が強く、維持・保存しやすいのが魅力。

天然酵母種は種おこしや種継ぎに手間がかかり、発酵力もイーストに比べると弱めですが、使用する素材により異なる香りや味、こくをパンに加えることができます。

 

もち味の違うイーストと天然酵母種。それぞれの特徴を生かすことで、パンづくりの楽しさがさらに広がりそうですね。

 

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パン用酵母種の種類と特徴

 

では、代表的なパン用酵母種の種類と、その特徴を見てみましょう。

 

 

生イースト

パンに適した酵母を自然界から採取して培養。不純物を取り除き、脱水した製品で約70%が水分。

酵母が生きて活動している状態のため、ドライイーストより劣化がはやく賞味期限は製造日から1カ月ほど。食パン向き、菓子パン向き、冷蔵・冷凍生地用など、さまざまなタイプが販売されています。

ミキシング時に直接投入できますが、生地と混ざりにくいため、ミキシング時間が短いパンの場合は水で溶いてから投入します。

 

 
 
 

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ドライイースト

1940年代に開発された粒状のパン酵母。

培養したパン酵母を乾燥させた状態のため予備発酵が必要ですが、独特の香りを醸すことから好んで使うパン職人さんも多数います。

予備発酵にはイーストの5〜6倍量の温水(35〜40℃)を使用。約20分ほど置いて酵母を活性化させます。

ドライイーストの水分量はは生イーストの1/10程度で、約2倍の菌を含有。

主にフランスパンなどのリーンなパンや食パンなどに使用されます。未開封で2年常温保存できます。

 

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インスタントドライイースト

1970〜1980年代にアメリカ、フランスで開発されたパン酵母。

フリーズドライ加工した顆粒タイプで、予備発酵せずにそのまま生地に加えることができます。

発酵力が強く、使用量は生イーストの半分以下。

リーンなパン用、リッチなパン用があります。未開封で2年常温保存できます。

 

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セミドライイースト

生イーストとドライイーストの中間的な水分量の顆粒状パン酵母。

発酵力が強く、安定しています。

ルサッフル社の特許製品「サフ セミドライイースト/冷凍」シリーズは−18℃で冷凍保存し、解凍せずに使用可能。リーンなパン用、リッチなパン用があり、冷水に加えても高いパフォーマンスを発揮します。未開封で2年保存が可能です。

 

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ルヴァン種(ルヴァン・シェフ)

「ルヴァン(levain)」は、フランス語で「酵母」のこと。

フランスでは、小麦粉やライ麦粉からおこした発酵種をルヴァン・シェフ(親種)と呼び、この種からつくったパンだけが「パン・オ・ルヴァン」を名乗ることを許されています。

ほどよい酸味があり、味、香りのバランスのとれたパンをつくれるのがルヴァン種の魅力。

固めのルヴァン種は生地に分散しにくいため、ミキシング時間の短いパンはあらかじめ水に浸けてふやかしてから投入します。

 

ルヴァン液種(ルヴァン・リキッド)

ルヴァン種同様、小麦粉やライ麦粉からおこした発酵種。

ルヴァン種に比べて水分量が多く、とろりとしています。

風味の特徴はルヴァン種とほぼ同じですが、ルヴァン種よりおこすのも種継ぎも比較的簡単です。

 

レーズン種

レーズンに砂糖やハチミツなどの糖分と水を加えてつくる発酵種。

パンにまろやかな甘みとフルーティな香りが加わります。

発酵した液をそのまま生地に加えて使用するほか、小麦粉で種継ぎしてから使う方法もあります。

 

ヨーグルト種

ヨーグルトと糖分、水でつくる発酵種。ヨーグルトの優しい酸味がパンに加わります。

ヨーグルト由来の乳酸菌が最初からふくまれているため、比較的、簡単に種おこしができます。

小麦粉を加えてつくる方法もあります。

 

サワー種

乳酸菌を豊富に含む発酵種で、生地に酸味と奥行を与えます。

小麦粉やライ麦粉から元種をおこし、種継ぎをくり返して熟成させていくつくり方が一般的。市販のスターターを使用してつくることもできます。

ライ麦からおこす「ライサワー種」、アメリカ西海岸の小麦粉でつくる「サンフランシスコサワー種」など、世界中にさまざまな種類の種があります。

 

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市販の天然酵母パン種

 

ここからは、市販されているパン用の天然酵母種を紹介します。

 

ホシノ天然酵母パン種

日本古来の醸造技術を応用して開発した発酵種。

使用する際は温水で混ぜ、28℃で24時間発酵させる「生種おこし」を行います。もっちりと味わい深いパンが焼き上がります。

米由来の酵母を国産小麦、国産米、麹、水で育てた「ホシノ天然酵母パン種」「ホシノ天然酵母フランスパン種」、神奈川県の丹沢山塊で採取された酵母由来の「ホシノ丹沢酵母パン種」、薔薇から採取した酵母で育てた「ホシノ薔薇酵母パン種」などがあります。

未開封で製造日から1年、冷蔵保存できます。

 

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白神こだま酵母

 

秋田県と青森県の県境にまたがる白神山地で発見された製パンに適した酵母を培養。一切の添加物を加えない、自然のままの野生酵母。

顆粒状の「白神こだま酵母ドライ」は水に溶かすだけでよく、種おこしは不要。発酵力と持続性があります。未開封で製造日より約1年半冷蔵保存可能です。業務用生タイプもあります。

 

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あこ天然酵母

100%穀物と水だけで培養したパン用酵母種。

材料はカナダ・アメリカ産の小麦粉、滋賀県産の低農薬米、酵母菌、麹菌、不純物を除去してミネラル分だけを残した水。酵母自体にくせがないため、小麦粉の風味を最大限に引き出した、すっきりとした味わいのパンをつくることができます。

発酵力が強めで食パン、菓子パン、クロワッサンなどに向く「ストロング」、クラストがパリッと焼けるハード系向きの「ライト」があります。

 

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とかち野酵母

北海道十勝のエゾヤマザクラのサクランボから生まれた酵母。

帯広畜産大学と北海道農業研究センターが北海道十勝地方の花や果実からパン生地発酵性の高い菌を探し、分離に成功しました。

品種改良を行っていない、いわゆる「野生酵母」ですが、無糖生地はもちろん、糖度の高い生地にも使用できます。焼き上がったパンには穏やかな香味があります。

予備発酵不要なインスタントドライタイプと予備発酵が必要なドライタイプがあります。

 

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イーストや自家製酵母種の使い分け方

 

パン用酵母にはさまざまな種類がありますが、どれをを使うかは、求める発酵力や風味次第。

たとえば、ボリュームを出したいパンには発酵力の高いイースト、甘みを加えたいときはレーズン種、酸味を加えたいときはルヴァン種やサワー種を使うといった具合ですね。

 

また、イーストの中でも、インスタントドライイーストは比較的糖度の低めの生地に使うのが一般的。糖分の多い生地は浸透圧でイーストの細胞が壊れやすいため、甘い生地には浸透圧に強い生イーストがよく使われます。

 

さらに、それぞれのパン酵母の特性を生かして数種類を組み合わせれば、より複雑で奥行のあるパンに仕上げることも可能に。

わずか直径4~14ミクロンのパン酵母。そのパワーを上手に活用すれば、パンづくりがもっと楽しくなりそうです。