11月20日は「世界子どもの日」。
世界の子どもたちの相互理解と福祉の向上をめざして、1954年、国際連合によって制定されました。
その後、世界のすべての子どもたちの人権を保障する目的で、1989年に「子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)」が誕生。
条約が結ばれてから、今年でちょうど30年。
この間に、子どもたちを取り巻く環境はどのように変わってきたのでしょうか。
2019年11月15日に発表された「ユニセフ(国連児童基金)」の報告書『岐路に立つ子どもの権利条約』のハイライトをご紹介するとともに、自分たちにできる小さな支援、ユニセフ募金についても調べてみました。
子どもを取り巻く環境はどう変わった?
2019年11月15日、ユニセフの新しい報告書『岐路に立つ子どもの権利条約(原題:The Convention on the Rights of the Child at a Crossroads)』が発表されました。
この30年間の「子どもの権利」の進歩について、報告書は次のように述べています。
- 世界の5歳未満児の死亡率は約60%低下。
- 学校に通っていない小学校学齢期の子どもの割合は、18%から8%に減少。
- 子どもの権利条約の原則:差別のないこと、子どもの最善の利益、命を守られ成長する権利、意思を表明し参加する権利は、世界中の多くの憲法、法律、政策、慣行に影響を与えている。
一方で、この進展は「世界各地で等しく起こったものではない」とも指摘しています。
- 低所得国および中所得国において、最も貧しい家庭の子どもは、最も裕福な家庭の子どもよりも、予防可能な原因で5歳の誕生日までに死亡する可能性が2倍高くなる。
- 最新の入手可能なデータによると、サハラ以南のアフリカの最も貧しい家庭の子どもではしかの予防接種を受けている人数は半分に留まる。これに対して、最も裕福な家庭の子どもは85%。
- 児童婚率が世界で低下傾向にあるにもかかわらず、一部の国で、最も貧しい少女たちは1989年よりも今日の方が、より高いリスクに晒されている。
また、世界の子どもたちに影響を及ぼしている新しい脅威についても触れられています。
- 貧困、差別、疎外により、数百万人の最も取り残された子どもたちがリスクに晒され続けている。武力紛争、外国人への排斥感情の高まり、世界的な移民・難民危機はすべて、世界の発展に壊滅的な影響を及ぼす。
- 物理的、生理学的、疫学的に気候危機の影響を受けるリスクが最も高いのは子どもたち。気候の急激な変化は病気を広げ、極端な気象現象の強度と頻度を高め、食料と水の不安定な供給につながる。今行動しなければ、多くの子どもに最悪の事態を招く。
- これまで以上に多くの子どもが予防接種を受けているが、過去10年間の予防接種率の停滞によって、これまでの子どもの健康状態の改善が後退してしまう恐れがある。2010年以来、はしかのワクチン接種率は停滞しており、多くの国でこの命を奪う病気が復活する可能性が高まっている。2018年には約35万件のはしかの症例が確認され、2017年の合計の2倍以上に達した。
- 学校に通っていない子どもの数は変わらず、学校に通う子どもの学習成果は低いままである。世界的には、初等教育水準に達していない子どもの数は2007年以降変動がない。子どもたちは学校にいても基礎的なことも学べておらず、今日の経済社会で成功するために必要なスキルについては言うまでもない。
こうした状況を改善するために必要なのは、下記の対処であると、報告書は伝えます。
- より多くのデータと証拠、実績のある対応策
- 支援の拡大
- 資金の増加
- 若者と共に解決策を見出すこと
- プログラムにおいて公平性とジェンダー平等の原則を適用すること
- 急速に変化する世界では新たな方法も必要とされている
- 新たな機会と課題に立ち向かい、子どもたちの権利を再び世界的な大義として位置付ける必要がある
これらの道筋を見つけるために、ユニセフは「これからの1年、子どもの権利条約の約束を実現するために必要なことについて、世界中で対話を行おうと計画している」そうです。
(『岐路に立つ子どもの権利条約」概略は(公財)日本ユニセフ協会2019年11月18日付プレスリリースをご参照ください)
日本という恵まれた国に生まれ、飽食の時代を生きている私たち。
貧困や飢餓、戦争、自然災害、差別など、困難な状況に暮らす子どもたちのために何ができるでしょうか。
人権を学ぶ「子どもの権利条約カードブック」
国際社会が子どもを取り巻く課題に一丸となって取り組む原動力ともなっているのが、「子どもの権利条約」。
では、「子どもの権利条約」でうたわれている、子どもの権利とはどのようなものなのでしょう。
条約の名前は知っていても、くわしい内容まではわからないという方も多いのではないでしょうか。
(公財)日本ユニセフ協会では、「子どもの権利条約」の条文をわかりやすく要約しイラストつきのカードにした冊子「子どもの権利条約カードブック」を制作・配布しています。
「子どもの権利条約カードブック」
B5判30ページ(カードにできる厚めの紙を使用、カラー)/1冊90円(1冊まで無料)
監修:国連子どもの権利委員会委員・弁護士 大谷美紀子
ユニセフのWEBサイトから、PDFファイルをダウンロードすることもできるので、子どもと一緒に「人権」について学ぶ時間を持ってみてはいかがでしょうか。
私たちにできること「ユニセフ募金」
ユニセフは、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちの権利と健やかな成長を促進するために活動している国連機関。
その活動資金は、個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。
ユニセフへ募金すれば、困難な状況にある世界の子どもたちをサポートすることができるのです。
ユニセフへの主な募金方法は……
- ユニセフ募金:ユニセフの活動全体をサポートする募金
- 緊急・復興募金:地震や津波、洪水、台風などの自然災害や、紛争で被災した子どもたちのための募金(地域を指定可能)
- 分野・地域指定募金:水と衛生、HIV/エイズなど特定のユニセフの活動分野や、ユニセフが活動を行っている国・地域を指定して募金
- ユニセフ支援ギフト:支援物資を指定して募金
- ユニセフ・マンスリーサポートプログラム:毎月、一定の金額を募金
ユニセフのWEBサイトのこちらのページから、オンライン募金が可能です。
世界中の人々の募金によって、ユニセフは、このような支援物資を調達しているそうです(下記はWEBで紹介されている支援物資のほんの一部です)。
ほんの少しのサポートで、小さな命を救うことができます。
ひとりでも多くの子どもが平和に、健やかに成長できるように、できることから少しずつ、小さなサポートをはじめませんか?
■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。( www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています
■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。( www.unicef.or.jp )